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笹幸恵
2020.8.5 12:25日々の出来事

感染者狩り

昨日の読売新聞に、「『感染者狩り』横行」という
記事が載っていた。
地方に帰省した人で、感染がわかると、
「うちの県にコロナを持ってきた」
「このバカは誰だ?」
匿名で発表されたはずなのにネット上で個人が特定され、
中傷の嵐となった。
「バイオテロリスト」
「世の中から消えてほしい」
そのうち、根も葉もない目撃情報が流されるようになり、
スーパーや美容院は出入り禁止、引きこもらざるを
得なくなったという。

ここ最近、地方の人の話を聞く機会があった。
「東京の人はうちの県に来ないでほしい」
「みんな警戒している」
ええ~、東京に住んでいるってだけで、こんな対応されるのか。
普段引きこもってパソコンの前に座っているだけなので、
ほとんど実感がなかった。

もう一人、地方に住む知人は、
「来ないで」という理由をはっきりこう言っていた。
「もし来て感染が判明したら、うちが発生源になる。
地元で噂になって生きていけなくなる」
こういう人は、もし「うち」ではなく「よそ」が
発生源になったら、我先にと叩くのだろうな、と
ちょっと意地悪く思いながら私はその話を聞いていた。

感染症で一番大事なのは、感染者を悪者扱いしない、
感染したことを非難しないことだという。
そりゃそうだよね。不可抗力だもんね。
手洗いうがい、マスクしていたって、
かかるときはかかるしね。
だけど不安のあまり、恐怖のあまり、
他者を非難し、中傷の言葉を浴びせる。
「個」のない弱さのなせる業。

今朝の羽鳥慎一モーニングショーでは、
玉川徹が神妙な顔つきでこう述べていた。
「隔離ではなく、保護と言うべきだった」
あれだけ声高に「隔離だ!」「隔離だ!」と叫んでおいて
今さら何を言っているのか。
「感染者狩り」を横行させ、それをさも正義で
あるかのように思いこませた張本人ではないか。
自分の心に巣食う差別心を直視せず、
「保護と言うべきだった」って、まやかしも過ぎる。
玉川が好きなガダルカナル島戦に置き換えて言うなら、
「撤退」「敗退」を「転進」と言い換えた大本営に
そっくり、ということになる。
笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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